業界トピックス
企業法務・法務部のリモートワーク事情|在宅勤務・テレワークは可能なのか?
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コロナ後の法務部とリモートワークの現状
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なぜ企業がリモートワークを廃止・縮小しているのか?
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法務部の仕事とリモートワークは相性が良い?
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リモートワークと出社、それぞれのメリット・デメリット
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法務部員・インハウスロイヤーの転職動向
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まとめ:自分に合った働き方を選ぶことが重要
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2020年から始まったコロナ禍をきっかけに急速に普及した在宅勤務。法務部門も例外ではなく、リモートで契約書レビューや法務相談に対応するなど、多くの変化が見られました。
しかし、2023年以降はオフィス出社に回帰する企業も増えつつあり、「法務部の仕事は本当にリモートに向いているのか?」という疑問も再燃しています。
本記事では、企業法務におけるリモートワークの実情や、出社回帰の背景、今後の働き方の選択肢について、現場の視点を交えながら整理していきます。
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コロナ後の法務部とリモートワークの現状
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コロナ禍を経て、企業法務や法務部の働き方は大きく変化しました。ここでは、出社回帰が進む現状と、大手企業の動向を整理してみましょう。
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■在宅勤務から出社への移行が進む企業も
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業がテレワーク・在宅勤務制度を導入しました。法務部門でも、契約書の確認や社内規程の整備、各種法律相談など、可能な業務からオンライン対応が進みました。
しかし、2023年以降は社会全体の落ち着きとともに、オフィス勤務を基本とする企業が再び増加。背景には「生産性の維持」「チーム連携の強化」など、組織運営上の課題意識があるようです。
一方で、フルリモートを前提とするスタートアップや外資系企業も一定数存在し、「働き方の二極化」が進んでいるのが現状です。法務部員や企業内弁護士がキャリアを考える上でも、この流れは無視できません。
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■LINEヤフーやAmazonなど大手企業の動き
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出社回帰の傾向は、大手企業の動きにも表れています。
かつてフルリモート勤務を容認していたLINEヤフーは、2024年より「出社回帰」へと方針転換。Amazonやサントリーなど、他の大企業でも出社を重視する動きが見られます。
とはいえ、すべての企業がオフィス中心に戻っているわけではありません。ハイブリッド型勤務を導入する企業や、完全リモートを前提とするスタートアップ・外資系企業も一定数存在し、“働き方の多様化”が進んでいるのが現状です。
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なぜ企業がリモートワークを廃止・縮小しているのか?
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リモートワークの環境が整ってきた一方で、出社を求める企業が増えているのはなぜでしょうか。以下では主な理由を整理します。
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■生産性やコミュニケーションへの懸念
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リモート環境では、チーム全体の進捗把握や情報共有が難しくなるケースがあります。特に、対面でのちょっとした雑談や相談が減ることで、意思決定が遅れたり、イノベーションの機会を逃したりする懸念が指摘されています。
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■マネジメント・評価制度の難しさ
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在宅勤務では「業務中の様子が見えにくい」「成果が把握しづらい」といったマネジメント上の悩みがつきまといます。特にプロセス評価を重視する企業では、公平な評価制度の設計が難しいという声も。
こうした不安から、「対面でのやり取り」に回帰しようとする動きが見られます。
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■企業文化や教育の課題
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新人や若手の育成においては、オフィスでのOJTや、先輩の働きぶりを間近で見られることが成長に寄与すると考える企業も多くあります。
また、部署を越えた偶発的な交流や一体感などは、オフィスの方が生まれやすいという見方も根強く残っています。
こうした文化的・教育的な背景もあり、リモートワーク縮小の流れは単に業務効率だけの問題ではないことがうかがえます。
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法務部の仕事とリモートワークは相性が良い?
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リモートワークを縮小する企業が増える一方で、法務部の業務はオンライン環境との親和性が高いという意見もあります。ここでは、リモート不可とされた過去の背景と、現在の環境変化を整理してみましょう。
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■コロナ前は「リモート不可」とされた理由
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コロナ前は、法務の仕事は「機密情報を扱うため在宅勤務には不向き」というのが一般的な考え方でした。契約書の原本確認や押印業務など、紙ベースのやり取りも多く、オフィスに出社することが当然視されていたのです。
また、取引先とのやり取りや社内会議も対面が基本であり、「法務部はオフィスワーク中心」というイメージが強く根付いていました。
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■DX・セキュリティツール・リーガルテックの普及で変わった法務の働き方
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現在は、電子契約サービスやオンライン会議ツール、セキュリティ強化されたクラウドサービスの普及により、法務部の業務は大きく変化しています。
契約書の確認や社内承認フローはクラウド上で完結できるようになり、押印業務も電子署名に置き換わりつつあります。さらに、チャットツールやナレッジ共有システムの発展により、リモート環境でも情報伝達がスムーズに行えるようになりました。
加えて、近年はリーガルテック(LegalTech)の進展もリモートワークを後押ししています。契約書レビューを支援するAIツール、法律書籍の電子書籍閲覧サービス、法令検索や判例リサーチを効率化するサービスなどが普及し、従来はオフィスで紙資料を参照していた作業の多くがオンラインで完結可能になりました。
こうしたDX化とリーガルテックの進展によって、法務部はリモートワークと十分に両立できる業務領域へと移行しつつあるのです。
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■リモートワークはむしろ効率的という実感
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筆者自身、コロナ禍にインハウスロイヤーとして在宅勤務を経験しましたが、契約書チェックや調査業務といった「集中力を要する仕事」では、むしろリモートの方が作業効率が高かったと感じます。
通勤時間が不要になることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれ、結果としてパフォーマンス向上につながるケースもありました。
もちろん、社内調整や経営陣との協議など、対面のほうがスムーズな場面もありますが、日常的な業務はリモートでも十分に対応可能です。
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リモートワークと出社、それぞれのメリット・デメリット
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リモート勤務と出社勤務には、それぞれ一長一短があります。法務部員・インハウスロイヤーとして働く上で、自分に合った環境を選ぶためには、双方の特徴を理解することが重要です。
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■リモート勤務のメリット・デメリット
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リモート勤務は、時間や場所にとらわれずに働ける柔軟性が大きな魅力です。特に契約書レビューや法的調査のように集中力を求められる作業では、在宅環境がプラスに働くことも少なくありません。
まずはメリットから見てみましょう。
■メリット
・通勤時間が不要になり、業務効率やワークライフバランスが改善する
・集中できる環境を自分で整えやすく、専門業務に没頭しやすい
・感染症リスクや対人ストレスを軽減できる
一方で、リモート勤務ならではの課題も存在します。
■デメリット
・孤独感やチームとの一体感の不足を感じやすい
・自己管理能力が求められ、オンオフの切り替えが難しい場合がある
・情報共有や新人教育がしづらく、ナレッジが蓄積されにくい
・テレワーク時の光熱費・通信費などの処理
つまり、個人の裁量で進められる業務には相性が良い一方、組織全体の協働には課題が残るのがリモート勤務の特徴です。
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■出社勤務のメリット・デメリット
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出社勤務は、組織としての一体感を醸成しやすく、コミュニケーションや教育の面で大きな利点があります。特に若手法務部員や異動直後の社員にとっては、職場で直接学べる環境が成長につながることも多いです。
ここで出社勤務のメリットを整理します。
■メリット
・対面でのコミュニケーションがスムーズで、意思決定が早い
・上司や同僚の働き方を間近で学べるため、人材育成に有効
・オフィス設備(高速回線、会議室、資料など)を利用できる
・チームとして働く一体感や企業文化を感じやすい
しかし、当然ながらデメリットも存在します。
■デメリット
・通勤に時間や費用がかかり、疲労やストレスが増える
・柔軟な働き方が難しく、ワークライフバランスが崩れやすい
・感染症や災害などのリスクに直接影響を受けやすい
このように、出社勤務は組織力を高めやすい反面、柔軟性が損なわれやすいという特徴があります。
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■ハイブリッド勤務という選択肢
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近年増えているのが、リモートと出社を組み合わせた「ハイブリッド勤務」です。
集中が必要な業務は在宅で行い、会議や打ち合わせは出社で対応するなど、業務内容やチーム状況に応じて働き方を使い分けるスタイルが定着しつつあります。
法務部門でも、効率と協働のバランスを取りやすい働き方として注目されています。
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法務部員・インハウスロイヤーの転職動向
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働き方をめぐる社会情勢の変化は、法務部員やインハウスロイヤーの転職市場にも影響を与えています。在宅勤務の制度が維持されるかどうかは、転職を検討する際の重要なポイントのひとつになっています。
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■出社を容認する人が増える一方で在宅勤務希望者も多い
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コロナ禍直後は「絶対に在宅勤務をしたい」という声が多く聞かれましたが、現在は状況が変わりつつあります。感染症への不安が薄れ、オフィス出社を受け入れる人も増えてきました。
とはいえ、「柔軟に働きたい」「通勤時間を減らしたい」という理由で在宅勤務を希望する人も依然として多く、ニーズは二極化しています。
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■当社調査:25%の法務部員が「在宅勤務あり」を希望
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当社は法務特化の転職エージェントとして、多くの法務部員・インハウスロイヤーの方と面談を行っています。
2025年3月1日~9月3日の間に面談した法務部員の約25%が在宅勤務を希望していました。
つまり、4人に1人が「在宅勤務制度のある会社で働きたい」と考えている計算になります。
人数としては過半数ではありませんが、制度の有無が転職を決断するきっかけになっているケースも多く、採用活動において無視できないポイントといえるでしょう。
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■在宅勤務制度を維持する企業も存在
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コロナ禍の収束後、多くの企業が出社回帰へとシフトしていますが、すべての企業がその流れに従っているわけではありません。
一部の企業では、フルリモート勤務を引き続き認めたり、ハイブリッド勤務を標準とする制度を整備したりしており、柔軟な働き方を維持しています。
特に法務部門においては、契約書レビューやリサーチといったオンラインで完結できる業務が多いことから、在宅勤務を制度として継続する合理性が高いといえます。
そのため、出社回帰が社会的な流れになっている中でも、自分のライフスタイルや価値観に合った働き方ができる企業を選ぶ余地は十分に残されているのです。
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まとめ:自分に合った働き方を選ぶことが重要
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リモートワークと出社勤務のどちらが優れているかは一概には言えません。法務部員やインハウスロイヤーにとって重要なのは、自分のキャリアやライフスタイルに合った働き方を実現できる環境を選ぶことです。
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■企業法務のキャリアは柔軟に選べる
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法務業務は、DXやリーガルテックの進展により、在宅勤務とも十分に両立できる業務領域へと変化しています。
一方で、出社にはコミュニケーション・育成・文化浸透といった強みもあります。
働き方に「正解」はありません。
自分のキャリアやライフスタイルに合った環境を選ぶことが、長く健やかに働くための鍵です。
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■C&Rリーガル・エージェンシー社でキャリア相談を
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働き方の選択肢は企業によって大きく異なります。
「リモート勤務可能な企業に転職したい」「出社と両立できる職場を探したい」といったご希望があれば、ぜひ一度、C&Rリーガル・エージェンシー社にご相談ください。
法務特化の転職エージェントとして、多くの法務部員・インハウスロイヤーのキャリア支援を行ってきた実績があり、在宅勤務やリモートワークに対応した求人情報も豊富にご案内可能です。
ご自身に合った働き方の実現を、私たちがサポートいたします。
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