業界トピックス
〈後編〉企業法務の「戦略法務」とは?~業界ごとの特徴や、求められるスキル、やりがいを解説
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業界ごとに異なる戦略法務の特徴と傾向
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戦略法務の魅力・注意点とは?
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戦略法務に求められるスキル・マインドセットを紹介
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戦略法務を目指すならC&Rリーガル・エージェンシー社へ
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企業の経営戦略に深く関与し、法務の立場からビジネスを前進させる。それが「戦略法務」の役割です。従来の法務が“守り”に徹していたのに対し、戦略法務は“攻め”の法務とも呼ばれ、近年注目を集めています。
前編では、戦略法務の定義や具体的な業務内容、実際にどのような場面で活躍するのか、さらに必要なスキル・資格、そして向いている人の特徴ややりがいについて、基本から丁寧に解説しました。
前編はこちら:〈前編〉企業法務の「戦略法務」とは?~具体的役割や実務詳細を解説~
本記事〈後編〉では、法務を目指す方やキャリアアップを考えている方に向けて、
・業界ごとに異なる戦略法務の特徴と傾向
・必要なスキルや資格
・向いている人の特徴ややりがい
といった内容をわかりやすく解説します。
法務のキャリアに関心がある方にとって、戦略法務は視野を広げ、専門性を活かしながらビジネスの中核に関わることができる魅力的な選択肢です。
この機会に、「戦略法務」というキャリアを具体的に描いてみませんか?
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業界ごとに異なる戦略法務の特徴と傾向
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戦略法務の基本的な考え方は共通していても、その実務のあり方や求められる視点は、企業が属する業界によって大きく異なります。
業界ごとの事業構造やリスクの種類、関係法令やステークホルダーの性質が異なるため、法務が戦略的に関与するポイントも業界ごとに変化するのが実情です。
以下では、代表的な業界ごとの特徴と、戦略法務が担う役割の傾向について紹介します。
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■テクノロジー業界・スタートアップ企業
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新しいビジネスモデルやサービスが次々と生まれるテクノロジー業界やスタートアップでは、既存の法制度が想定していないビジネス領域に挑戦することが多く、法務の果たす役割は非常に大きいです。
具体的には、以下のような対応が求められます。
・法制度が未整備な中でのリスク判断
・グレーゾーンにおける適法性の整理
・ビジネスのスピード感に合わせた柔軟な設計支援
戦略法務には、リスクを抑えるだけでなく、どのようにすればサービスを実現できるかを前向きに提案する視点が不可欠です。
また、資金調達やM&Aなど、事業成長に直結する局面でも、外部のステークホルダーと渡り合う高度な交渉力が必要とされます。
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■製造業・インフラ業界
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モノづくりを基盤とする製造業や、電力・通信などのインフラ業界では、規格や法令、行政手続との整合性を重視した戦略法務が求められます。
たとえば以下のような業務が挙げられます。
・製品の開発・設計段階からの規制対応
・安全性・品質保証に関する法的基準の確保
・国内外のサプライチェーンにまたがる契約設計
また、開発からリリースまでのスパンが長い業界では、戦略法務も長期視点でリスクと向き合い、制度や市場の変化に対応できる設計力が求められます。
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■金融・保険業界
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金融・保険などの業界は、法的にも制度的にも最も規制が厳しい分野のひとつです。
金融商品取引法、保険業法、マネーロンダリング対策など、遵守すべきルールが多岐にわたります。
次のような対応を、常に正確かつスピーディに行う必要があります。
・規制当局(金融庁等)とのコミュニケーション
・新商品やデジタルサービスへの適用可否の検討
・コンプライアンス体制の構築と運用支援
この業界における戦略法務は、単にリスクを避けるのではなく、規制の範囲内でどこまでイノベーションを許容できるかを探る、高い専門性と信頼性が求められるポジションです。
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戦略法務の魅力・注意点とは?
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戦略法務は、従来型の「守りの法務」とは異なり、企業の経営や成長に直接関与できる点が最大の特徴です。
事業部門や経営層と同じ目線でビジネスを動かし、成果に寄与する手応えを得られる一方で、判断を誤れば企業全体に影響を及ぼすリスクも伴います。
ここでは、戦略法務というキャリアの魅力と、実務上で意識すべき注意点を整理します。
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■法務として経営に関与できる醍醐味
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戦略法務の最大の魅力は、単なる法的リスク管理にとどまらず、経営の意思決定そのものに深く関われることです。
たとえば、新規事業の立ち上げ時に「そもそもこのモデルは実現可能か」「法的な課題をどう乗り越えるか」といった議論に初期段階から関わり、ビジネススキームを組み立てたり、経営陣と並んでリスクと機会のバランスを判断する場面も少なくありません。
「リスクがあるからやめましょう」ではなく、「リスクはあるが、こうすれば実現できます」という提案型のアプローチが歓迎される環境であり、法務が主体的に価値を生み出す場面が日常的にあります。
また、M&Aやアライアンス、グローバル展開など、企業の成長フェーズを支える場面にも多く関わるため、法務としてのスキルだけでなく、経営感覚や事業理解が自然と養われるのも大きな魅力です。
「守る法務」から「つくる法務」へ。
そうした感覚を持って働けるのは、戦略法務ならではの醍醐味といえるでしょう。
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■やりがいのある一方で注意したいポイント
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一方で、戦略法務には高い専門性と責任が求められるため、「面白い仕事」ほど気を引き締める必要があるという側面もあります。
まず、法的な問題を単独で解決できるケースは少なく、事業部門・経営陣・外部パートナーなど、多くの関係者との連携が前提となります。
その中で、法務としての独立した視点と、現実的な落としどころを見極めるバランス感覚が常に求められます。
また、事業の初期から関わるということは、不確定要素の中で判断を下す必要があるということでもあります。
リスクの洗い出しが不十分だったり、制度変更へのアンテナが甘かったりすると、重大な結果を引き起こしかねません。
さらに、関与領域が広くなるほど、労働時間や負荷が不規則になるケースもあります。
経営との距離が近い分、タイムプレッシャーや即時対応を求められる場面も多く、「自律的に考え動く力」や「情報整理力」も重要なスキルとなります。
やりがいがある分、求められる視座と責任も高い――それが戦略法務のリアルです。
その点を理解し、着実に経験を積むことが、この分野で活躍するための第一歩といえるでしょう。
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戦略法務に求められるスキル・マインドセットを紹介
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ここでは、戦略法務として活躍するうえで求められるスキルや、向いている人の考え方・マインドセットについてご紹介します。
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■戦略法務に資格は不要?誰でも目指せるキャリア
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結論から言えば、戦略法務に就くために特定の資格は必要ありません。
法学部出身でなくても、弁護士資格がなくても、企業内での経験を積みながら戦略法務にステップアップすることは可能です。
もちろん、弁護士資格や司法試験合格などの法的専門資格があると、有利になる場面はあります。
しかし現場では、「どんな資格を持っているか」よりも「どんな対応ができるか」の方が重視される傾向があります。
特に、事業部門とのやりとりが多い戦略法務では、専門用語をわかりやすく伝える力や、関係者の意図をくみ取って落としどころを見つける力が問われます。
そうした実践的な力は、日々の業務の中で磨いていくことができます。
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■あると有利なスキル
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資格が必須ではないとはいえ、以下のようなスキルがあると、戦略法務としての活躍の場は格段に広がります。
① 英語力
海外進出やクロスボーダーM&Aなど、グローバルな事業展開では英語による契約交渉・文書対応が必要不可欠。読解力・会話力ともに実務レベルがあると強みになります。
② 会計・財務の知識
投資判断やスキーム設計に関わる場面では、財務諸表を読めることや、税務上の視点を持っていることが役立ちます。法務と経営をつなぐ存在として、数字に強い法務は重宝されます。
③ ビジネス全体への理解
戦略法務は、単に法令に適合しているかを見るのではなく、事業の狙いやマーケット、ユーザー視点を理解したうえで関与することが求められます。視野の広さは、そのまま提案力の強さにつながります。
これらはすぐに身につくものではありませんが、「法だけで完結しない分野に興味がある」方には非常に相性の良いスキル群です。
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■求められるマインドセットと、向いている人の特徴
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戦略法務の世界では、スキルや知識以上に、日々の仕事に対する姿勢や考え方(=マインドセット)が重視されます。
特に、次のような姿勢を持っている方は、この分野で大きく成長できる可能性を秘めています。
① 「どうすれば実現できるか」を考えられる人
戦略法務では、「その提案はリスクがあるからやめた方がいい」とブレーキをかけることよりも、「その目標を達成するには、どういう方法なら実現できるか」を考える前向きな姿勢が重視されます。
たとえば、新しいサービスを立ち上げる際に、法的な制約が見つかった場合。
単に「この手法はできません」と言うのではなく、「こういう形にすれば規制に抵触せずに展開できます」「この条件を整えれば実現可能です」といった代替案や条件付きの実行プランを提案できるかどうかが問われます。
このように、「リスクの指摘」だけでなく「選択肢の提示」まで踏み込んで考えられる人は、事業部門からも信頼され、戦略法務としての価値を発揮できます。
② 対話・調整が苦にならない人
戦略法務の業務は、社内の関係者(事業部・経営層・法務部)だけでなく、社外の専門家、提携先企業、行政機関などとの調整や交渉が日常的に発生する仕事です。
そのため、自分の意見を通すだけでなく、相手の立場や論点をくみ取り、丁寧にすり合わせる力が求められます。
たとえば、事業部が目指す方向性と、法務として守りたいラインが食い違う場面では、
お互いの目的を理解した上で、落としどころを模索し、合意形成を図る「橋渡し役」としての立ち回りが重要になります。
また、法的な概念や規制内容を、専門外の人に分かりやすく説明する力も欠かせません。
「対話を通じて共通理解をつくる」ことを厭わない人には、戦略法務の現場は非常に向いています。
③ 白黒だけでなく“グレー”に対応できる人
戦略法務が扱うテーマは、前例がないものや法制度が完全には整っていない領域に及ぶことも多く、明確な「正解」が存在しないグレーゾーンの判断が求められます。
たとえば、AIを活用したサービスや、既存の制度の枠組みでは位置づけが曖昧な商品などは、判断に迷うこともあります。
そうした中で、「この要件を満たしていれば実質的に問題はない」といった合理的な判断軸を設けて、自信を持って進言できるかどうかが重要です。
当然、その判断にはリスクへの理解や、組織としてどこまで踏み込むかという感度、そして説明責任を果たす覚悟が必要です。
「正解がないなら避ける」ではなく、「最善の選択肢を導く」姿勢が、戦略法務には求められます。
④ 事業を良くしたいという視点を持てる人
戦略法務は、事業を成長させるために「どう貢献できるか」を常に考えられるかどうかが問われるポジションです。
「法的にグレーだからダメ」ではなく、「法的に整理すれば可能性がある」「こう表現すれば誤解を避けられる」といった形で、事業の目的や意義を理解したうえで、実現のサポートができる人材は、経営陣からも頼りにされます。
また、単に指摘するだけでなく、「この方向性の方がより安全で、成長の余地が広がるのでは?」といった戦略的な視点で提案できることも、戦略法務としての価値を高める要素です。
「事業の成功に貢献したい」という純粋な思いと、それを法務の立場から支える意志。
それが、戦略法務というフィールドに向いている人の大きな特徴といえるでしょう。
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戦略法務を目指すならC&Rリーガル・エージェンシー社へ
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戦略法務は、企業経営の最前線に立ち、事業の成長と法的安定の両立を支えるやりがいのある仕事です。
スキルや経験はもちろん大切ですが、何よりも「ビジネスに貢献したい」という意思と、「どうすれば実現できるか」を考える姿勢が、この分野では大きな力になります。
「自分にもできるだろうか」「一歩踏み出したいけれど不安がある」
そんな方こそ、まずは一度、法務職に特化した転職支援サービス「C&Rリーガル・エージェンシー社」にご相談ください。
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