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転職ノウハウ

法務転職で評価される契約書のスキルとは?

目次
  • 1.基本となる5つの契約書

  • 2.応募先企業ごとに重要となる契約書

  • 3.転職エージェントがお薦めする面接対策

  • 4.転職エージェントからのアドバイス

  • 法務部の仕事として、機関法務やコンプライアンス対応等の様々な業務がありますが、転職の際に最も重視されるのは「契約書レビューの経験」です。それでは、どのような契約書の経験があると転職の際に評価されるのでしょうか?

    今回は、法務業界に特化した転職エージェントが、法務部員が転職前にやっておくべき契約書について解説します。「現在転職活動をしている」という人や、「将来法務部に転職するかもしれない」という人は、参考にしてみてください。

  • 1.基本となる5つの契約書

  • 下記の5つは、企業法務の基本となる契約書です。どの企業においても重要となりますので、転職前にできる限りたくさん経験しておきましょう。

    ・売買契約書(取引基本契約書、物品売買契約書、不動産売買契約書等)
    ・秘密保持契約書(NDA、機密保持契約書、守秘義務契約書等)
    ・請負契約書(建設工事請負契約書、下請契約書、業務委託契約書等)
    ・寄託契約書(倉庫寄託契約書、混合寄託契約書、消費寄託契約書等)
    ・賃貸借契約書(テナント契約書、工場賃貸借契約書、サブリース契約書等)

    上記の5つの中でも、特に「売買契約書」と「秘密保持契約書」は企業法務の中で多くの割合を占めています。面接の場で重点的に質問される可能性があるため、これまでに扱った契約書を整理しておきましょう。「売買契約」と一言でいっても、不動産か動産か、継続的取引か単発取引か、担保が付いているかいないか等によって、大きく性質が異なります。具体的な契約内容を説明できるように、これまでに扱ったことのある契約書の概要を頭に入れておきましょう。

    また、面接の場では「どのような立場で契約書を扱った経験があるか」についても聞かれます。月にどれくらいの数の契約書を見ているか、リスクのある条項を指摘して修正したことがあるか、どのような条項をどのように修正した経験があるか、取引先が作成した契約書を一から審査したことがあるか、契約書に問題が見つかった場合は他の部署に対してどのように説明を行っているか、契約書のレビューだけでなく原案から作成したことがあるか等、具体的な業務経験について質問されます。スムーズに回答できるように、これまでに扱った契約書をリスト化する等して整理しておきましょう。

    また、最近では大企業を中心にコンプライアンス意識が高まっており、個人情報保護法、著作権法、景品表示法に関する契約や利用規約のニーズが高まっています。現職でこれらの契約書や規約を扱う機会がある人は、積極的に経験しておきましょう。特に広告業界やIT企業に転職することをお考えの人は、上記の3つの法令がどれだけ扱えるかがポイントとなります。

  • 2.応募先企業ごとに重要となる契約書

  • 上記で紹介した契約書は、全ての企業に共通して重要な契約書です。これらに加えて、応募先企業の業種や業界によっては、別のスキルが重視されることがあります。

    例えばメーカーでは、共同開発契約やライセンス契約、リース契約、事業譲渡契約、代理店契約等を扱う機会が多く、特に知的財産権に関するスキルは高く評価されます。メーカーでは、自社が開発する製品の知的財産権を保護するだけでなく、他社の権利を侵害していないかについて調査・管理をする必要があります。メーカーの法務部への転職をお考えの人は、特許法や商標法、意匠法等の実務経験を積んでおくと良いでしょう。

    外資系企業では、英文契約書のスキルが重視されます。求められるレベルは、「英文の売買契約書や秘密保持契約書を理解し、条文や条項の手直しができること」です。日系の企業であっても、海外進出をしている企業では英文契約書のスキルが必要となります。外国企業との合弁契約、フランチャイズ契約、販売店契約や代理店契約、出資契約等を扱う可能性があるため、これらの英文契約書を扱った実務経験があると高く評価されます。現職で英文契約書を扱っている人は、応募書類や面接でアピールしましょう。

    医療業界や製薬会社では、新薬の研究開発やジェネリック対応等の業務があるため、共同研究開発契約書、治験委受託契約書、ライセンス契約書等が重要となります。

    IT企業では、システム開発や運用に関する契約が多数を占めます。ソフトウェア開発委託契約、システム運用契約、ソフトウェア使用許諾契約、プログラムリース契約書等が代表的です。

    ベンチャー企業では、契約書のレビューのみならず「ドラフト作成の実務経験」が重視されます。大企業では契約書の書式やマニュアルがある程度そろっており、一から契約書を作成することはほぼありません。これに対して、ベンチャー企業では「そもそもひな形が存在しない」ということが珍しくありません。ベンチャー企業を希望する人は、契約書のドラフト経験を積んでおきましょう。

    以上のように、応募先企業の業界や業種によって、重要となる契約書の傾向は異なります。異業種に転職したいとお考えの人は、担当エージェントに相談しましょう。

  • 3.転職エージェントがお薦めする面接対策

  • 応募先の企業がどのような契約書をよく使うのかを知るためには、その企業の製品やサービスに付属する契約書や規約を読んでみましょう。応募先企業だけでなく、同業他社の製品やサービスも参考になります。例えば金融を希望する人は、日頃使っている銀行の口座開設申込書、重要事項説明書、取引規約、カードローン約款、補償規約、個人情報の取扱いに関する同意書、ネットバンキングの利用規定等に目を通してみましょう。キャンペーンの注意事項やルール、メルマガ配信の同意書やオプトアウト表示等も参考になります。

    日常生活において、人は無意識のうちに様々な契約を行っています。どんな契約があるのか、どんな条項があると安全に取り引きを行うことができるのか、どんな商品にどんな約款が付いているのかについて普段から気をつけておくと、面接での話題作りに役立ちます。

    まだ転職先の業界や職種を絞っていない人には、「弁護士・法務人材 就職・転職のすべて(野村慧著 / 第一法規) 」(※1)という本がお薦めです。この本の第2部「就職・転職活動における情報収集と分析の視点について」では、 企業法務の業務内容が詳しく解説されています。転職活動における情報収集の方法や、収集した情報の分析方法も紹介されているため、転職活動に向けた実践的なノウハウを身につけることができます。

  • 4.転職エージェントからのアドバイス

  • 今回は、法務部の転職で評価される契約書のスキルについて紹介しました。今回紹介した事例はあくまで一般的なケースであり、応募先企業の規模や所在地、募集条件によって傾向は異なります。個別のアドバイスを聞きたいという人は、お気軽に転職エージェントに相談してください。

    C&Rリーガル・エージェンシー社では、法務分野に特化した専任エージェントとして、企業の法務部への転職について実践的なアドバイスを行っています。法務分野での転職をお考えの方は、一度ご相談ください。

  • 記事提供ライター

  • 元弁護士 ライター
    東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、企業取引等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行う。

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